年収4000万円の手取り2400万円——「半分近く持っていかれる国」で起業家が選ぶべき最適解

10年かけて会社を育て、ついに役員報酬4000万円。初めての給与明細を見て、笑ってしまった。控除額の欄に、新入社員の年収がまるごと書いてあったからだ。

年収4000万円の手取り(年間)
約2,400万円
月額手取り:約200万円 / 控除合計:約1,600万円(控除率40.0%)

創業10年、スタートアップCEOの給与明細——控除額が「年収800万円」

シリーズCの資金調達を終え、会社は黒字化。従業員80名。私の役員報酬は年額4,000万円。月額約333万円(賞与なしの均等分割)です。そして毎月の給与明細に記された控除額は——約133万円。年間にすると約1,600万円。これは日本の平均年収(約460万円)の3.5倍に相当します。

控除項目月額年額
額面月収約333万円4,000万円
健康保険料(上限)約5万円約60万円
厚生年金保険料(上限)約6万円約72万円
介護保険料約9,000円約10.8万円
雇用保険料(上限)約5,000円約6万円
所得税(源泉徴収・限界45%)約104万円約1,248万円
住民税(標準税率10%)約33万円約396万円
手取り約200万円約2,400万円

税率45%——「稼げば稼ぐほど持っていかれる」世界
のリアル

日本の所得税は超過累進課税で、課税所得4,000万円を超える部分に45%の最高税率がかかります。さらに住民税10%が加わり、限界税率は実に55%。1万円追加で稼いでも、手元に残るのは4,500円。ここまで来ると、「頑張って稼ぐ意味」について哲学的な問いが頭をよぎります。

課税所得の計算を見てみましょう。給与収入4,000万円から給与所得控除(上限195万円)と基礎控除(48万円)、社会保険料控除(約149万円)を差し引くと、課税所得は約3,608万円。これに適用される税率は——

課税所得帯税率税額
195万円以下5%9.75万円
195万円超〜330万円10%13.5万円
330万円超〜695万円20%73万円
695万円超〜900万円23%47.15万円
900万円超〜1,800万円33%297万円
1,800万円超〜3,608万円40%723.2万円
所得税合計約1,164万円

さらに住民税が約360万円。社会保険料約149万円を合わせて、合計控除額は約1,673万円。率にして約41.8%。これが日本の「最高所得者」に課せられる現実です。

給与所得の限界

最高税率55%
役員報酬の増額が
ほぼ国庫への寄付に
なるパラドックス

配当所得の選択

分離課税20.315%
給与より税率が低い
ただし社会保険料の
考慮が必要

キャピタルゲイン

自社株売却益
上場益は20.315%
Exit戦略の税務設計が
最大の資産防衛策

「給与を増やすな、配当を増やせ」——経営者の手取り最適化戦略

年収4,000万円を超えるゾーンでは、給与を増やすより配当所得やキャピタルゲインで受け取る方が圧倒的に有利です。配当の申告分離課税は所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%=合計20.315%。給与の限界税率55%と比べると、同じ1万円でも手取りが7,969円と4,500円——3,469円もの差がつきます。

ただし、配当を増やしすぎると以下のトレードオフがあります。

これらのバランスを考慮した最適解が、「役員報酬1,500〜2,000万円+残りを配当」という線です。給与で社会保険の上限までカバーしつつ、残りは配当で受け取る。この設計で、トータルの税負担率を40%→30%以下に圧縮できます。

経営者の出口戦略——自社株売却と税金:IPOまたはM&Aで自社株を売却する場合、譲渡益に対して20.315%の申告分離課税。これが経営者にとって最大の資産形成イベントです。ただし、種類株式(優先株)の設計、ストックオプションの行使タイミング、信託を活用した贈与税対策など、Exitの5年前からの税務戦略が決定的に重要です。早めに税理士・弁護士・FPのチームを組みましょう。

高額納税者のためのQ&A

Q. 年収4000万円の手取りはいくらですか?
年間約2,400万円、月額約200万円です。控除合計は約1,600万円で、所得税だけで約1,200万円。率にして約40%が天引きされます。
Q. 法人成りして役員報酬+配当にすると、手取りは本当に増えますか?
増えます。年収4,000万円を「役員報酬2,000万円+配当2,000万円」に分割した場合、給与税額約520万円+配当税額約406万円=合計約926万円。一方、全額給与だと約1,600万円。差額は約674万円です。ただし法人税も含めたトータル税負担では、給与の方が会社の損金計上で有利になる場合もあるため、総合的なシミュレーションが必要です。
Q. 海外移住で「所得税ゼロ」は本当に可能ですか?
ドバイやシンガポールなど低税率国への移住で所得税負担は大幅に下がりますが、「ゼロ」は困難です。日本の非居住者になるには「生活の本拠」を海外に移す必要があり、年間の日本滞在日数、家族の居住地、資産の所在地などが総合的に判断されます。また出国税(国外転出時課税)として、1億円以上の有価証券の含み益に15.315%が課税される点に注意が必要です。
Q. 年収4000万円の経営者がふるさと納税をしない理由は?
控除上限は存在します(約50〜60万円)。しかし、年収4000万円の経営者にとって、返礼品で得られる日用品や食品の価値は手取りに対するインパクトが非常に小さく、「手間とリターンが見合わない」と感じる人が多いのが実態です。ただしワンストップ特例を使えば手続きは簡便なので、やらないよりはやった方が得です。
Q. タックスヘイブン(租税回避地)対策税制の影響は?
海外子会社に利益を留保している場合、日本のCFC(被支配外国法人)税制により、ペーパーカンパニーの利益が日本の親会社に合算課税される可能性があります。実態のある海外事業でなければ、租税回避と見なされるリスクが高いです。国際税務に精通した専門家の助言が不可欠です。
Q. 年収4000万円の人が資産形成で最も気をつけるべきことは?
税負担の大きさに目を奪われて、リスキーな節税商品やスキームに手を出すことです。過去には映画ファンドや太陽光発電ファンドなど、節税効果を謳いながら多額の損失を出した事例が数多くあります。「節税」より「合法的な課税繰延」と「運用リターンの最大化」に集中すべきです。