残業代の計算方法をわかりやすく解説【2026年最新】
残業代(時間外割増賃金)は、労働基準法第37条に基づき、使用者に支払い義務があります。本記事では、基礎賃金の求め方から実際の計算手順まで、具体例を交えながら段階的に解説します。
残業代計算の3ステップ——基礎時給から割増率適用まで
残業代を正しく計算するには、以下の3つのステップを順に踏む必要があります。いずれかを誤ると最終的な支給額に大きく影響するため、各段階を正確に理解しましょう。
ステップ1:1時間あたりの基礎賃金を算出する
月給制の場合、次の計算式を使います。
基礎時給 = 月給 ÷ 月の所定労働時間
月の所定労働時間は、会社の就業規則で定められた1日の所定労働時間と年間所定労働日数から以下の式で求めます。
月の所定労働時間 = (年間所定労働日数 × 1日の所定労働時間) ÷ 12
たとえば完全週休2日制で年間245日勤務、1日8時間の会社であれば、(245日 × 8時間) ÷ 12か月 ≒ 163.3時間です。月給35万円の場合、35万円 ÷ 163.3時間 ≒ 2,143円が基礎時給となります。
除外すべき手当の確認:先ほど述べた基礎賃金の計算では、家族手当、通勤手当、住宅手当(一律支給でない場合)、別居手当、子女教育手当、臨時賃金、賞与などを月給から差し引きます。これらの手当を含めて計算してしまうと、基礎時給が実際より高く算出され、その後の割増計算でも誤差が拡大します。
ステップ2:時間外労働の区分を正しく分類する
1か月の総労働時間のうち、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた部分が「法定時間外労働」として割増賃金の対象になります。労働時間の分類は以下の4つです。
| 労働の種類 | 該当条件 | 割増率 |
|---|---|---|
| 法定時間外労働(~60h) | 法定労働時間を超過し、かつ月60時間まで | +25% |
| 法定時間外労働(60h超) | 月60時間を超えた時間外労働 | +50% |
| 深夜労働(22時~5時) | 午後10時から午前5時までの労働 | +25% |
| 法定休日労働 | 週1回の法定休日に出勤した場合 | +35% |
ここで重要なのは、深夜労働が法定時間外労働と重なった場合は割増率が合算される点です。たとえば22時以降の時間外労働は、25%(時間外)+ 25%(深夜)= 50%の割増となります。
ステップ3:区分ごとに割増率を乗じて合算する
各区分の労働時間に、基礎時給と割増率をかけた金額を合計します。
残業代 = 基礎時給 × (時間外時間 × 1.25 + 深夜時間 × 0.25 + 休日時間 × 1.35 + 60h超時間 × 0.50)
深夜が時間外と重なる場合、その時間は1.25 + 0.25 = 1.50倍で計算します。休日労働が深夜に及ぶ場合は1.35 + 0.25 = 1.60倍です。
パターン別・残業代の計算シミュレ
ーション
実際の勤務パターンに即した計算例を3つ紹介します。いずれも基礎時給2,000円で試算しています。
例1:平日の時間外労働のみ(18時〜21時・3時間)
| 基礎時給 | 2,000円 |
|---|---|
| 時間外時間 | 3時間(すべて法定時間外 ~60h) |
| 割増率 | +25%(1.25倍) |
| 計算式 | 2,000円 × 3時間 × 1.25 |
| 残業代 | 7,500円 |
最も基本的な残業パターンです。所定労働時間8時間を超えた3時間が法定時間外労働となります。
例2:深夜に及ぶ時間外労働(20時〜24時・4時間)
| 基礎時給 | 2,000円 |
|---|---|
| 20時〜22時(時間外) | 2時間 × 1.25 = 5,000円 |
| 22時〜24時(時間外+深夜) | 2時間 × 1.50 = 6,000円 |
| 残業代合計 | 11,000円 |
22時を境に割増率が変わります。前半2時間は通常の時間外(+25%)、後半2時間は時間外に深夜割増が加算され+50%になります。
例3:休日出勤+深夜労働(日曜・21時〜25時・4時間)
| 基礎時給 | 2,000円 |
|---|---|
| 21時〜22時(休日労働) | 1時間 × 1.35 = 2,700円 |
| 22時〜25時(休日+深夜) | 3時間 × 1.60 = 9,600円 |
| 残業代合計 | 12,300円 |
法定休日の出勤は+35%、深夜と重なるとさらに+25%が加算されます。休日労働と深夜の組み合わせは最も高い割増率が適用されるケースです。
計算でつまずきやすい落とし穴——割増基礎と手当の扱い
実際の給与計算業務では、以下のようなポイントで誤りが生じやすくなっています。厚生労働省の監督指導でも重点的に確認される項目です。
割増賃金の基礎から除外できる手当の限定列挙
労働基準法施行規則第21条が定める7種類の除外可能手当を正しく把握していないケースが多く見られます。たとえば「皆勤手当」や「精勤手当」は除外リストに含まれていないため、基礎賃金に算入しなければなりません。「役職手当」や「資格手当」も同様に基礎賃金の対象です。誤って除外していると、未払い残業代の対象となり得ます。
固定残業代を含んだ月給の扱い
月給のなかに固定残業代が組み込まれている場合、基礎時給を算出する際には固定残業代部分を差し引く必要があります。たとえば月給35万円のうち5万円がみなし残業代(30時間分)であれば、基礎賃金は30万円で計算します。この基本を怠ると、基礎時給が水増しされて正味の残業代が過小になるおそれがあります。
変形労働時間制の月またぎ計算
1か月単位の変形労働時間制を採用している場合、週40時間を超えても必ずしも割増賃金の対象とは限りません。変形期間中の所定労働時間の総枠を超えた分のみが時間外労働となるため、計算の前提が通常の固定シフト制とは異なります。
よくある質問
- 残業代の計算で基本となる「1時間あたりの基礎賃金」はどうやって出すのですか?
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月給制の場合、月の所定労働時間で月給を割ります。月の所定労働時間は「年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12」で算出します。例えば年間240日勤務、1日8時間の場合、月の所定労働時間は160時間です。月給30万円なら、30万円÷160時間=1,875円が基礎時給となります。このとき通勤手当や家族手当、住宅手当など、労働と直接関係のない手当は基礎賃金から除外されます。
- 月60時間の残業をした場合、残業代はいくらになりますか?
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基礎時給2,000円の方で計算します。中小企業か大企業かを問わず、2023年4月以降、月60時間超の部分には50%の割増率が適用されます。60時間ちょうどの場合、全60時間に25%が適用され、2,000円×1.25×60時間=150,000円です。これが60時間を超えると、超えた部分が50%に跳ね上がります。
- 年俸制や歩合給でも残業代は発生しますか?
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はい、発生します。年俸制であっても、あらかじめ定めた所定労働時間を超えて働いた分については、通常の月給制と同様に残業代を支払う義務があります。歩合給(出来高払制)の場合も、法定労働時間を超えた労働に対しては割増賃金が必要です。歩合給の残業代計算では、歩合給の総額を総労働時間で割った「歩合給の時間単価」に、各割増率を乗じて算出します。
- 残業代計算時に含めてはいけない手当には何がありますか?
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労働基準法施行規則第21条により、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当(一律支給を除く)、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)は基礎賃金から除外します。一方で皆勤手当や役職手当、資格手当は基礎賃金に含まれます。