法定外残業の割増率と計算方法——法定内残業との根本的な違い

法定外残業(法定時間外労働)とは、労働基準法第32条で定められた法定労働時間——すなわち1日8時間・週40時間——を超えて行われる労働を指します。これに対して「法定内残業」は、会社の就業規則で定めた所定労働時間(例:1日7時間)を超えても法定労働時間(8時間)の範囲内の労働を指し、割増賃金は発生しません(ただし通常の時給単価での支払いは必要です)。つまり、割増賃金が発生するかどうかの分かれ目は「法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたかどうか」です。

法定内残業と法定外残業の違い
法定内残業:所定7時間勤務の会社で8時間働いた場合の超過1時間 → 割増なし・通常時給
法定外残業:所定8時間勤務の会社で9時間働いた場合の超過1時間 → 割増+25%適用
※いずれの場合も、労働時間としてカウントし、賃金の支払いは必要

法定外残業の割増率——2段階制度

法定外残業の割増率は、1ヶ月の累積時間数によって2段階に分かれます。

法定外残業の割増率(月の累積時間別)
累積時間割増率時給換算法的根拠備考
月60時間まで+25%1.25倍労基法第37条第1項大企業・中小企業共通
月60時間超+50%1.50倍同ただし書2023年4月から中小企業も完全適用

重要なポイントは、60時間を超えた場合でも、1〜60時間目までは+25%のままで、61時間目以降のみ+50%が適用されることです。これは「60時間超の部分」のみ割増率が跳ね上がる仕組みで、遡及してすべて+50%になるわけではありません。

法定外残業の計算——重複適用
パターン

実際の勤務では、法定外残業と深夜労働(22時〜5時)や法定休日労働が重なるケースが頻繁にあります。各割増率は重複して適用されます。主なパターンは以下の通りです。

法定外残業の重複適用パターン
勤務態様内訳合計割増率時給換算
平日日中(法定外)時間外 +25%+25%1.25倍
平日深夜(法定外+深夜)時間外 +25% + 深夜 +25%+50%1.50倍
法定休日(日中)休日 +35%+35%1.35倍
法定休日(深夜)休日 +35% + 深夜 +25%+60%1.60倍
60時間超(日中)60h超 +50%+50%1.50倍
60時間超(深夜)60h超 +50% + 深夜 +25%+75%1.75倍

特に注目すべきは「月60時間超+深夜」の+75%です。基礎時給2,000円の方であれば、この時間帯の時給は3,500円——通常の1.75倍になります。企業にとっては極めて重いコストであり、長時間労働の抑止力として機能しています。

法定外残業と週の起算日

法定外残業の判定で見落とされがちなのが「週の起算日」です。労働基準法では、週40時間の超過判定は「1週間」を単位としますが、どの曜日を週の起算日とするかは会社が就業規則で定めます。多くの会社は日曜日起算または月曜日起算を採用しています。例えば月曜日起算の場合、月曜から日曜までの7日間で40時間を超えた部分が法定外残業となります。日をまたいだ勤務(夜勤など)の場合、暦日を基準に労働時間を計算するのが原則ですが、労使協定により一定の便法を採用することも可能です。

よくある質問

法定外残業と法定内残業の違いは何ですか?
法定外残業は法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働を指し、割増賃金(+25%以上)の対象です。法定内残業は所定労働時間(例:7時間)を超えたが法定労働時間(8時間)以内の労働で、割増は発生しませんが、通常の時給での賃金支払いは必要です。
法定外残業の割増率は一律+25%ですか?
いいえ。月60時間までは+25%ですが、月60時間を超えた部分は+50%です。また深夜(22時〜5時)と重なる場合はさらに+25%が加算されます。月60時間超かつ深夜の場合は+75%(1.75倍)という高い割増率になります。
中小企業でも月60時間超は+50%ですか?
はい。2023年3月31日をもって中小企業への猶予措置は完全に終了しました。2023年4月1日からは、大企業・中小企業を問わず、すべての事業場で月60時間超の時間外労働に+50%の割増率が適用されます。
法定外残業の計算で週40時間はどのように判定しますか?
会社が就業規則で定めた週の起算日を基準に、7日間の労働時間が40時間を超えたかで判定します。例えば月曜日起算なら月曜〜日曜の7日間です。日ごとに8時間を超えた場合と、週で40時間を超えた場合は、重複しないよう調整計算が必要です。
日またぎ勤務の法定外残業はどう計算しますか?
原則として暦日(午前0時で区切る)を基準に計算します。ただし労使協定により、勤務開始時間を基準にした便法計算も認められています。例えば17時から翌2時までの勤務では、17時〜22時は通常時間、22時〜24時は法定外+深夜で+50%、0時〜2時も引き続き同じ扱いです(深夜時間帯が継続しているため)。

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