残業代の時給計算と割増率——給与形態別・割増種別の全パターンを計算式で網羅

「自分の時給はいくらなのか」——残業代を正しく計算するための出発点でありながら、意外に多くの人が正確な数字を把握していません。特に月給制の場合、「給与明細の総支給額÷勤務時間」では誤った計算になることがあります。

このページは計算式のリファレンスです。時給・日給・月給・年俸の各給与形態から基礎時給を導く方法と、すべての割増率パターンを体系的に整理します。

給与形態別・基礎時給の算出式

給与形態別 基礎時給の計算方法
給与形態計算式具体例注意点
時給制時給そのもの1,500円/h最もシンプル
日給制日給÷1日の所定労働時間日給12,000÷8h=1,500円/h所定労働時間が基準
月給制(月給−除外手当)÷月平均所定労働時間(30万−2万)÷168h=約1,667円/h除外手当の見極めが重要
年俸制(年俸−除外手当)÷12÷月平均所定労働時間(600万−24万)÷12÷168h=約2,857円/h年俸の範囲確認が必要

割増率の完全早見表——6パターンの組み合わせ

残業の割増率 全6パターン早見表
労働の種類割増率法的根拠時給1,500円の単価時給2,000円の単価
法定内残業0%(割増なし)1,500円2,000円
法定外残業(〜60h/月)25%労基法第37条1項1,875円2,500円
法定外残業(60h超/月)50%同条1項ただし書2,250円3,000円
深夜労働(22時〜5時)25%(時間外と加算)同条4項1,875~2,250円2,500~3,000円
法定休日労働35%同条1項2,025円2,700円
休日深夜労働60%(休日35%+深夜25%)同条1項+4項2,400円3,200円

複合割増の計算——実際の勤務パターンで練習

割増率が複合する場合の計算例をいくつか示します。時給1,500円を基準とします。

【例1】18時〜23時の残業(5時間)→最初の4時間(18〜22時)は通常残業25%=1,875円/h×4=7,500円。最後の1時間(22〜23時)は深夜50%=2,250円/h×1=2,250円。合計9,750円。

【例2】日曜(法定休日)の9時〜18時→休日35%で2,025円/h×8=16,200円。

【例3】日曜の18時〜23時→18〜22時は休日35%=2,025円/h×4=8,100円。22〜23時は休日深夜60%=2,400円/h×1=2,400円。合計10,500円。

基礎時給から除外できる手当・できない手当

残業代計算の基礎となる賃金に含めるかどうかで迷うのが各種手当です。法律上、以下の手当は基礎時給の計算から除外できます。

基礎時給に算入する手当・除外する手当
除外できる手当(労働基準法施行規則第21条)除外できない手当(計算に含める)
通勤手当役職手当
住宅手当技能手当
家族手当資格手当
別居手当精勤手当(皆勤手当)
子女教育手当職務手当
臨時に支払われた賃金(見舞金等)調整手当
1ヶ月超の期間ごとに支払われる賃金(賞与等)地域手当

ここでよくある会社の運用ミスが「役職手当も除外している」ケースです。役職手当は労働の対価としての性格が強いため、基礎時給に含める必要があります。除外されている場合は、基礎時給が本来より低く計算され、残業代が過少になります。

よくある質問

時給計算の端数処理はどうする?
基礎時給の1円未満の端数は、四捨五入でも切り上げでも切り捨てでも構いません。ただし労働者に不利になる切り捨てのみを行っている場合は注意が必要です。残業代の最終的な支払い額については、1円未満の端数は50銭以上を切り上げ・50銭未満を切り捨てるのが一般的な事務処理です。
パートの時給が1,100円ですが、残業の割増はどうなる?
パートでも割増率は正社員と同じです。時給1,100円の場合、法定外残業は1,375円/h(25%増)、深夜なら1,650円/h(50%増)、休日なら1,485円/h(35%増)となります。ただし、最低賃金との関係には注意が必要で、割増前の時給が最低賃金を下回っている場合はそもそも違法です。
月60時間超の50%割増はいつから適用?
2023年4月1日から、すべての企業(中小企業を含む)に適用されています。それまでは中小企業は猶予されていましたが、この猶予期間は終了しました。現在、企業規模に関係なく、月60時間を超える時間外労働には50%以上の割増賃金が必要です。
固定残業代(みなし残業)の時給計算はどう確認する?
固定残業代÷みなし残業時間=割増後の時給です。たとえば固定残業代5万円÷みなし30時間=約1,667円。これが基礎時給×1.25より低ければ、固定残業代が不足している可能性があります。不足があれば差額を請求できます。