基本給から残業代を計算する方法——月給制の基礎時給算出ステップ

月給制の場合、残業代計算の最初のステップは基礎時給の算出です。基礎時給は「残業代計算の基礎となる賃金の時給換算額」であり、単純に「月給÷月の労働時間」ではありません。なぜなら、残業代計算の基礎に含める手当と含めない手当が法律で明確に区別されているからです(労働基準法施行規則第21条)。この区別を誤ると、残業代が過少になるか過大になるかのどちらかであり、企業側・労働者側双方にとって正しい理解が不可欠です。

基礎時給の計算式(最重要)
基礎時給 = (基本給 + 残業代算入対象手当) ÷ 月の所定労働時間数

月の所定労働時間数の計算式
月所定労働時間 = (365日 − 年間休日日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月

例:年間休日120日・1日8時間の会社 → (365−120)×8÷12 = 約163.3時間

基礎賃金に含める手当・含めない手当

残業代計算の基礎賃金——含める手当・含めない手当一覧
区分手当の種類取り扱い
含める基本給、役付手当、技能手当、精皆勤手当、物価手当、調整手当すべて基礎賃金に算入
含めない家族手当(扶養人数に応じたもの)、通勤手当(実費弁償的なもの)算入しないのが原則
含めない住宅手当(一律に支給されるものを除く)、別居手当、子女教育手当算入しないのが原則
含めない臨時に支払われた賃金(結婚祝金、見舞金等)、賞与算入しない
含めない1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス等)算入しない

実務上最も紛らわしいのが住宅手当と家族手当です。「住宅手当」と名称がついていても、全社員一律に月2万円が支給されるようなものは「労働の対償」とみなされ、基礎賃金に含めるべきとされる場合があります。逆に、扶養家族の有無や人数に応じて変動する家族手当は、明確に除外されます。手当の実質が労働の対償かどうかが判断基準です。

月給別 基礎時給シミュレ
ーション

月給と年間休日別 基礎時給一覧表(1日8時間の場合)
月給(基本給+算入手当)年間休日120日(163.3h)年間休日115日(166.7h)年間休日105日(173.3h)
25万円1,531円1,500円1,443円
30万円1,838円1,800円1,731円
35万円2,144円2,100円2,020円
40万円2,450円2,400円2,309円

同じ「月給30万円」でも、年間休日が120日ある会社(月所定163.3時間)と105日の会社(月所定173.3時間)では、基礎時給に約107円の差が出ます。これは残業代計算に直接影響し、月20時間残業した場合でも2,000円以上の差になります。会社の年間休日数を正しく把握することが、正確な残業代計算の出発点です。

月の所定労働時間——年間休日数の重要性

基礎時給の分母となる月所定労働時間は、会社が就業規則で定めた年間休日数によって変動します。年間休日には、法定休日(週1日、年間52日以上)に加えて、会社が任意に付与する所定休日や祝日、夏季休暇、年末年始休暇などが含まれます。自分の会社の年間休日数は、就業規則または雇用契約書で確認できます。年間休日数が分からない場合は、給与明細の月所定労働時間表示があるか確認するか、総務・人事部門に問い合わせることを勧めます。

よくある質問

基本給から残業代を計算するとき、通勤手当は含めますか?
いいえ。通勤手当(交通費)は実費弁償的な性質を持つため、残業代計算の基礎賃金から除外されます(労働基準法施行規則第21条)。ただし、通勤距離にかかわらず全員一律に支給される「通勤手当」は実質的に労働の対償とみなされ、基礎賃金に含められる可能性があります。
月によって所定労働時間が異なる場合、基礎時給はどう計算しますか?
年間の平均所定労働時間を用いて計算する方法と、その月の所定労働時間で都度計算する方法があります。多くの企業では年間平均を使用します((365日−年間休日)×1日所定時間÷12)。就業規則で定められた方法を確認してください。
住宅手当は残業代計算の基礎に含めますか?
原則として含めません。ただし、住宅手当が家賃補助の実費弁償ではなく、「全社員一律○万円」のように労働の対償として一律に支払われている場合は、基礎賃金に含めるべきと判断されることがあります。名称ではなく実質で判断される点に注意してください。
基本給が上がった場合、残業代の基礎時給はいつから変わりますか?
基本給の改定日(昇給日)から新しい基礎時給で計算します。例えば4月1日付で基本給が30万円から32万円に上がった場合、4月分の残業代から新しい基本給に基づく基礎時給で計算します。3月以前の残業代を遡って再計算することは通常ありません。
自分の会社の年間休日数がわからない場合どうすればいいですか?
就業規則を確認するのが最も確実です。就業規則は常時10人以上の労働者を使用する事業場では作成・届出が義務付けられており(労基法第89条)、労働者はいつでも閲覧を請求できます。記載がない場合は、人事・総務部門に直接確認してください。年間の労働日数を正確に把握していなければ、残業代が正しいかどうかの検証はできません。

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