年収から残業代を計算する方法——年収ベースの基礎時給算出と残業単価
年収から残業代の基礎時給を逆算する場合、最初に行うべきは「年収から賞与(ボーナス)を除外し、月額ベースに戻してから時給換算する」という手順です。賞与は残業代計算の基礎賃金から除外されるためです(労働基準法施行規則第21条)。また各種手当のうち残業代計算に含めるもの・含めないものの区分も考慮する必要があります。
年収から基礎時給を算出する計算式
月額基礎賃金 = (年収 − 賞与総額 − 除外手当年額) ÷ 12ヶ月
基礎時給 = 月額基礎賃金 ÷ 月の所定労働時間数
月所定労働時間 = (365日 − 年間休日日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12
※除外手当:家族手当、通勤手当(実費弁償)、住宅手当(家賃比例型)、臨時賃金など
年収別 基礎時給と残業単価シミュレーション
| 年収(賞与込み) | 賞与(想定) | 月額基礎賃金 | 基礎時給 | 法定外残業単価(+25%) | 法定休日単価(+35%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 80万円 | 26.7万円 | 1,634円 | 2,043円 | 2,206円 |
| 500万円 | 100万円 | 33.3万円 | 2,041円 | 2,551円 | 2,755円 |
| 600万円 | 120万円 | 40.0万円 | 2,450円 | 3,063円 | 3,308円 |
| 800万円 | 160万円 | 53.3万円 | 3,266円 | 4,082円 | 4,409円 |
年収500万円(賞与100万円含む)の方の場合、基礎時給は約2,041円です。月20時間の法定時間外残業なら約51,000円、月30時間なら約76,500円。年収にすると約60万〜90万円の残業代が毎月の給与とは別に発生している計算になります。これらの金額が適正に支払われているか、自身の給与明細で確認することをお勧めします。
年収ベース計算の注意点——「みなし年収」に惑わ
されない
転職市場でよく見かける「年収500万円(みなし残業代40時間分含む)」といった求人票。この場合、年収500万円のうち「基本給相当」と「みなし残業代」を正しく分離しなければ、基礎時給の過大評価につながります。例えば年収500万円のうち固定残業代(月40時間分)が年80万円含まれている場合、残業代計算の基礎となる「本来の年収」は420万円です。この420万円から基礎時給を算出し、実際の残業時間に応じた残業代との過不足を検証する必要があります。
年収からの残業代逆算——未払い残業代の総額試算
未払い残業代の請求を検討している場合、年収ベースでの概算が有効です。在職中の年収記録(源泉徴収票)があれば、以下の手順で時効期間内(当面3年)の未払い総額を試算できます:(1)各年の源泉徴収票から年収と賞与総額を確認する、(2)年収から賞与を引き、12で割って月額基礎賃金を算出する、(3)月所定労働時間で割って基礎時給を算出する、(4)過去の残業時間記録(タイムカード、日報等)から月別の未払い時間を集計する、(5)基礎時給×割増率×未払い時間で月別の未払い額を計算し、時効期間内の合計を求める。この試算結果をもとに、内容証明郵便で会社に請求することになります。
よくある質問
- 年収から残業代の基礎時給を出すとき、社会保険料や税金は考慮しますか?
- いいえ、年収(額面、税・社会保険料控除前の金額)から計算します。残業代の基礎時給は税引き前の賃金額をベースとするため、各種控除は関係ありません。源泉徴収票の「支払金額」を使います。
- 年収に残業代が含まれている場合、基礎時給の計算はどうなりますか?
- 年収から残業代部分を除外して基礎時給を計算する必要があります。さもなければ、残業代が基礎時給に織り込まれて過大な残業代計算になる(または会社が実際より高い基礎時給で計算していると錯覚する)可能性があります。正しくは「年収 − 賞与 − 残業代(実績)」を基礎賃金とします。
- 年収400万円と600万円では、残業代の時給単価にどれくらいの差がありますか?
- 年間休日120日・賞与が年収の20%と仮定した場合、年収400万円では基礎時給約1,634円(残業単価約2,043円)、年収600万円では基礎時給約2,450円(残業単価約3,063円)です。月20時間の残業だと約2万円の差。年収が高いほど1時間あたりの残業代も比例して高くなります。
- 転職時の年収交渉で、残業代込みの提示を適正に評価するには?
- 「年収○○万円(固定残業代△△時間分を含む)」という提示の場合、まず固定残業代部分を分離し、残りが本当の基本年収です。その基本年収から基礎時給を計算し、固定残業代が法律に沿った適正額か(基礎時給×1.25×固定時間数以上か)を検証します。固定残業時間が実態より少なく設定されていると、超過分がサービス残業になるリスクがあります。
- 副業の収入も年収に含めて残業代計算すべきですか?
- いいえ。残業代計算の基礎賃金は、あくまで「当該事業場における賃金」です。副業(他の会社からの収入)は、本業の残業代計算とは無関係です。ただし副業を含めた労働時間の通算が問題になるケース(労災保険の給付基礎日額の計算など)はありますが、残業代の計算においては各事業場の賃金のみを対象とします。
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