賞与の手取り計算——標準賞与額から読み解く「本当に振り込まれる金額」

「賞与(しょうよ)」という響きには、どこか特別な重みがあります。年に1〜2回、頑張りの対価としてまとまったお金が振り込まれる。しかし、いざ明細を見ると「標準賞与額」や「賞与支給額」など聞き慣れない言葉が並び、肝心の振込額との差に戸惑った経験は誰にでもあるはずです。

このページでは、人事・給与担当者が使う正式な計算ロジックに沿って、賞与の手取り額が決まる仕組みを解説します。

賞与にかかる3つの社会保険——「標準賞与額」がカギ

賞与から天引きされる社会保険料は、標準賞与額という値をベースに計算されます。標準賞与額とは簡単に言えば「賞与支給額の1,000円未満を切り捨てた金額」です。たとえば賞与が785,432円なら、標準賞与額は785,000円。この端数処理された金額に各保険料率を掛けていくのが基本ルールです。

賞与の社会保険料計算——料率と計算例(標準賞与額50万円の場合)
保険の種類本人負担率計算式控除額
健康保険約5.0%500,000 × 5.0%25,000円
厚生年金9.15%500,000 × 9.15%45,750円
雇用保険0.6%500,000 × 0.6%3,000円
社会保険料合計14.75%73,750円

ここで重要なのは、健康保険料率が加入している保険組合によって異なる点です。協会けんぽの場合、都道府県ごとに料率が設定されており、東京都は約4.95%、大阪府は約5.08%(2024年度)。この微妙な差が、同じ賞与でも住んでいる地域によって手取りが変わる原因です。

賞与の所得税——「前月の給与」で税率が決ま
る仕組み

賞与の源泉所得税は、月給とは違う計算方法を取ります。具体的な手順は次のとおり:

  1. 前月の給与から社会保険料を差し引いた金額を求める
  2. その金額に対応する「賞与の源泉徴収税率」を国税庁の表から参照する
  3. 賞与から社会保険料を引いた金額に②の税率を掛ける

この方式のため、前月に残業が多かった月の翌月に支給される賞与は、源泉所得税が高めに出ることがあります。逆に前月に欠勤が多ければ税率は下がります。いずれにせよ年末調整で是正されるため、年間の手取り額で見れば損得はありません。

賞与明細の実例——どこを見ればいいのか

実際の賞与明細を想定して、チェックすべき項目を順に見ていきます。

賞与明細のサンプル(額面70万円のケース)
項目金額見方のポイント
賞与支給額700,000円いわゆる「額面」。会社が支給を決めた金額
健康保険料35,000円標準賞与額×健康保険料率。会社も同額を負担
厚生年金保険料64,050円標準賞与額×9.15%。将来の年金原資
雇用保険料4,200円支給額×0.6%(一般事業)
所得税(源泉徴収)約43,000円前月給与に応じた税率で計算
差引支給額(手取り)約553,750円実際に口座に振り込まれる額

賞与明細と月給明細を見比べると、賞与には「住民税」の欄がないことに気づくはずです。住民税は前年所得に基づき、月給からのみ天引きされるため、賞与明細には登場しません。この違いが賞与の手取り率を月給より高くしている最大の要因です。

よくある質問

賞与からも雇用保険料は引かれる?
はい、引かれます。雇用保険料は月給・賞与を問わず、すべての賃金に対して0.6%(一般の事業の場合)が課されます。賞与だから免除されるということはありません。
賞与の計算で「前月の給与」がない場合はどうする?
新入社員で前月の給与がない場合や、育休・産休から復帰直後で前月の給与がゼロに近い場合は、賞与から社会保険料を控除した金額に対して一律の税率(乙欄)が適用されるか、会社が「前月の給与があるもの」とみなして計算する場合があります。詳細は経理担当に確認を。
賞与を全額iDeCoに回せますか?
iDeCoの掛金は月額単位で設定するもので、賞与時にまとめて拠出することはできません。ただし毎月の掛金を賞与月に増額するよう設定変更することは可能です(年1回まで変更可)。企業型DC加入者であれば、賞与からの拠出(賞与拠出)が認められている場合もあります。
賞与の支給月をずらすと手取りは変わりますか?
単月の手取りは前月給与の影響で変わりますが、年間トータルでは変わりません。ただし健康保険の年度累計上限(573万円)や年金の1回上限(150万円)に引っかかる高額賞与の場合、支給を分割することで保険料負担が変わる可能性はあります。

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