給与所得控除の計算式を完全マスター——6段階の速算表から年収別の控除額まで網羅
所得税計算の根幹をなす「給与所得控除」。サラリーマンの必要経費とみなされるこの控除は、税額計算のスタート地点でありながら、その計算式を正確に理解している人は驚くほど少ない。令和7年の速算表をもとに、あらゆる年収帯の計算を実演する。
給与所得控除の速算表——令和7年版・6段階の計算式
給与所得控除は収入金額に応じて6段階に分かれており、それぞれ計算式が異なる。以下が令和7年の最新速算表だ。
| 給与等の収入金額(A) | 給与所得控除額の計算式 | 給与所得の金額 |
|---|---|---|
| 〜1,625,000円 | 550,000円(最低保障額) | A − 550,000 |
| 1,625,001円〜1,800,000円 | A × 40% − 100,000 | A × 60% + 100,000 |
| 1,800,001円〜3,600,000円 | A × 30% + 80,000 | A × 70% − 80,000 |
| 3,600,001円〜6,600,000円 | A × 20% + 440,000 | A × 80% − 440,000 |
| 6,600,001円〜8,500,000円 | A × 10% + 1,100,000 | A × 90% − 1,100,000 |
| 8,500,001円〜 | 1,950,000円(上限) | A − 1,950,000 |
この速算表のミソは「控除額が収入の増加に伴って逓減する」設計にある。低所得層ほど収入に占める控除率が高く(最大55万円の最低保障で、収入100万円なら55%が控除)、高所得層ほど控除率が低くなる(年収2000万円で控除率わずか9.75%)。これにより、所得税の累進性がさらに強化されている。
年収別・給与所得控除の実計算——6パターンの年収で完全試算
異なる年収帯で実際に給与所得控除を計算し、所得金額がどう変化するかを見てみよう。
| 年収(A) | 該当区分 | 計算式 | 控除額 | 所得金額 | 控除率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 150万円 | ① | 55万円(最低保障) | 550,000円 | 950,000円 | 36.7% |
| 200万円 | ③ | 200万×30%+8万 | 680,000円 | 1,320,000円 | 34.0% |
| 400万円 | ④ | 400万×20%+44万 | 1,240,000円 | 2,760,000円 | 31.0% |
| 600万円 | ④ | 600万×20%+44万 | 1,640,000円 | 4,360,000円 | 27.3% |
| 800万円 | ⑤ | 800万×10%+110万 | 1,900,000円 | 6,100,000円 | 23.8% |
| 1000万円 | ⑥ | 195万円(上限) | 1,950,000円 | 8,050,000円 | 19.5% |
年収150万円と年収600万円では、控除率が36.7%→27.3%と10ポイント近く低下する。ここにさらに所得控除(基礎控除・社会保険料控除等)が重なることで、実効税率は年収150万円でほぼ0%、年収600万円でも数%に留まることになる。
「年収の壁」と給与所得控除——パート収入103万円・130万円・150万円の境界線
配偶者のパート収入に関わる「壁」は、すべて給与所得控除と密接に関係している。
| 収入ライン | 給与所得控除 | 所得金額 | 発生する変化 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 55万円 | 45万円 | 基礎控除48万円で課税所得ほぼ0。所得税なし |
| 103万円 | 55万円 | 48万円 | 基礎控除48万円で課税所得0。所得税なし。配偶者控除の上限 |
| 106万円 | 55万円 | 51万円 | 所得税が発生し始める(課税所得約3万円) |
| 130万円 | 55万円 | 75万円 | 社会保険の扶養上限(年収見込み)。所得税約5.5万円+住民税 |
| 150万円 | 65万円(計算式②) | 85万円 | 配偶者特別控除がほぼ消失(残り2万円) |
| 201.6万円 | 約72.5万円(計算式③) | 約129万円 | 配偶者特別控除完全消失 |
103万円の壁の正体は「給与所得控除55万円+基礎控除48万円=103万円」に他ならない。つまり、給与所得控除の最低保障額55万円が、この「壁」を作り出している根本原因だ。この控除があるからこそ、パート収入103万円までは所得税が発生しない。
よくある質問
- 年の中途で退職した場合、給与所得控除は日割りになりますか?
- いいえ、給与所得控除は日割りや月割りにはならず、その年に支払われた給与の総額に対して年額で計算されます。たとえば1月〜3月の3ヶ月だけ働いて退職した場合、その3ヶ月分の給与総額に対して通常の速算表で控除額が決まります。最低55万円の保証もあるため、短期間の勤務でも有利な控除が受けられます。
- 2ヶ所以上から給与を受け取っている場合の計算は?
- すべての給与収入を合算した金額に対して給与所得控除が計算されます。源泉徴収の段階では各勤務先が個別に給与所得控除を適用することはなく、年末調整または確定申告で合算して精算します。複数の勤務先がある場合は、確定申告が必要になるケースがほとんどです。
- 給与所得控除は将来廃止される可能性がありますか?
- 令和2年の税制改正で給与所得控除が一律10万円引き下げられ、代わりに基礎控除が10万円引き上げられました。これは「働き方の違いによる控除格差の是正」政策の一環です。将来的にフリーランスやギグワーカーが増加する中で、給与所得者に有利な給与所得控除のさらなる縮小や基礎控除への統合が議論される可能性はあります。ただし、令和7年時点では具体的な廃止案は出ていません。