みなし残業代の計算方法

みなし残業代(固定残業代)は、あらかじめ一定時間分の残業代を月給に組み込んで支払う制度です。制度自体は合法ですが、金額が「基礎時給×割増率×固定残業時間」で求めた適正額を下回っていると、その差額分の未払い残業代が発生します。本記事では、固定残業代の適正額の検証方法と、固定時間を超えて働いた場合の超過分の計算方法を、具体例を交えて解説します。

固定残業代の適正額を求める計算式

固定残業代の適正額は、以下の式で計算できます。

固定残業代の適正額 = 基礎時給 × 割増率 × 固定残業時間

例:基礎時給1,500円、固定残業時間20時間、割増率1.25の場合
1,500円×1.25×20時間=37,500円

基礎時給は、基本給や役職手当・資格手当など、残業代の計算基礎となる賃金の合計を、1ヶ月の所定労働時間で割って求めます。たとえば月給230,000円(諸手当込み)で所定労働時間が160時間なら、230,000円÷160時間=約1,437円が基礎時給です。この場合、固定残業20時間分の適正額は約35,937円となります。

時給別・固定残業時間別の適正
額早見表

固定残業代の適正額の目安(割増率1.25倍)
基礎時給固定残業10時間固定残業20時間固定残業30時間
1,200円15,000円30,000円45,000円
1,500円18,750円37,500円56,250円
2,000円25,000円50,000円75,000円

上記の金額はあくまで割増率1.25倍での目安です。月60時間を超える法定時間外労働には+50%が適用されるため、固定残業時間が長い場合や月60時間超の残業が想定される場合は、割増率を変えて計算する必要があります。

固定残業時間を超えた場合の追加支払い額の計算

みなし残業制度でも、固定時間を超えた残業分については別途追加で支払う義務があります。超過分の計算式は次のとおりです。

超過分の残業代 = 基礎時給 × 割増率 × (実際の残業時間 − 固定残業時間)

例を見てみましょう。時給1,500円、固定残業20時間の会社で、実際の残業が28時間だった場合、超過分は8時間です。1,500円×1.25×8時間=15,000円が追加で支払われる必要があります。会社によっては「固定残業代は○時間分」としか説明せず、超過分を支払わないケースもあるため、給与明細と勤怠記録の突き合わせが重要です。

※みなし残業代を「残業代込みの給与」と一括で設定している場合、固定残業時間や計算基礎が明示されず、法定の最低基準を下回る違法な運用になることがあります。給与明細で内訳を確認しましょう。

適正額を下回る場合——差額の請求方法

支払われている固定残業代が適正額を下回っている場合、その差額は未払い残業代として請求できます。請求の流れは、まず勤怠記録と給与明細で実際の残業時間と支払額を確認し、会社に書面で差額を請求します。話し合いで解決しない場合は、労働基準監督署への相談、さらに労働審判や裁判へと進むことになります。

未払い残業代の請求には時効があり、原則として3年間(2020年4月以降に発生した賃金は段階的に5年へ延長)です。これを過ぎると請求できなくなるため、早めの対応が大切です。証拠となるタイムカード、PCのログオン・ログオフ記録、業務メールの送信時刻などを保管しておきましょう。

よくある質問

固定残業代の適正額を自分で計算するにはどうすればいいですか?
「基礎時給×割増率×固定残業時間」で計算します。基礎時給は基本給に役職手当や資格手当を足した金額を所定労働時間で割って求め、割増率は法定時間外なら1.25倍、休日労働なら1.35倍を使ってください。固定残業時間は給与規程や労働契約書で確認できます。
固定残業時間を超えて働いたのに追加で払われません。どうすればいいですか?
超過分(実際の残業時間−固定残業時間)に対する追加支払いは会社の義務です。勤怠記録と給与明細を突き合わせて差額を計算し、会社に書面で請求してください。解決しない場合は労働基準監督署に相談するか、未払い残業代の請求が可能です(時効は原則3年)。
固定残業時間が30時間で残業が実際には月60時間あります。計算はどうなりますか?
まず固定残業代の範囲を超えた部分として、30時間分は1.25倍で計算します。さらに、月60時間を超えた法定時間外労働には1.5倍(+50%)の割増が適用されます。固定残業30時間+超過30時間(うち60時間超の分は1.5倍)で計算されるため、複雑な場合は残業代計算ツールや専門家への相談をおすすめします。