厚生年金保険料——給与から最も多く天引きされる9.15%の正体と納付の意味

給与明細の控除項目の中で、最も金額が大きいのが厚生年金保険料だ。標準報酬月額の9.15%——月収30万円なら27,450円。この「天引きの王者」は、どんな計算で決まり、将来どれだけ戻ってくるのか。令和7年の制度をベースに、数字で徹底検証する。

厚生年金の計算式と等級表——32段階の標準報酬月額を全公開

厚生年金の保険料計算は、健康保険と同様に標準報酬月額ベースだが、等級区分が異なる。厚生年金は1級(88,000円)から32級(650,000円)までの32段階だ。

厚生年金保険料 等級別月額表(令和7年度)
等級標準報酬月額月収目安本人負担額(9.15%)事業主負担額合計拠出額
1級88,000円〜93,0008,052円8,052円16,104円
8級160,000円155,000〜165,00014,640円14,640円29,280円
14級240,000円230,000〜250,00021,960円21,960円43,920円
19級320,000円310,000〜330,00029,280円29,280円58,560円
24級440,000円425,000〜455,00040,260円40,260円80,520円
29級560,000円545,000〜575,00051,240円51,240円102,480円
32級650,000円635,000〜59,475円59,475円118,950円

健康保険と異なり、厚生年金の料率は全国一律9.15%。地域差は一切ない。また、厚生年金の被保険者資格は70歳まで(健康保険は75歳まで)なので、定年後再雇用で給与が下がった場合でも、70歳までは厚生年金保険料が発生し続ける。

生涯拠出額と受給額の徹底比較——あなたの年金は「払い損」か
「得」か

これこそが最大の関心事だろう。22歳で就職し60歳まで38年間、平均標準報酬月額40万円で働いた場合の収支を試算する。

厚生年金 生涯拠出額と受給額の比較(モデルケース)
項目計算式金額
生涯本人拠出総額36,600円/月(40万円×9.15%)×456ヶ月(38年)約1,669万円
生涯事業主拠出総額同上約1,669万円
老齢厚生年金(年額)400,000×5.481/1000×456ヶ月約100万円
老齢基礎年金(年額)816,000円(令和7年度満額想定)約81.6万円
65〜85歳の20年間受給総額(100万+81.6万)×20年約3,632万円
受給総額−本人拠出総額3,632万−1,669万約1,963万円のプラス

この試算では「払い損」どころか約2,000万円のプラスだが、ポイントは「事業主負担分も含めた受給額と本人負担分だけの比較」では不公平に見える点だ。実際には事業主負担分もあなたの労働の対価の一部であり、それを含めると拠出総額3,338万円対受給3,632万円と、差は約300万円に縮まる。

年金保険料が免除・猶予されるケース——知らないと大損する制度

厚生年金保険料には、免除制度が存在する。知っているかどうかで家計に大きな差が出る。

厚生年金保険料の免除制度一覧
免除事由免除範囲年金額への影響手続き方法
育児休業子が3歳になるまでの休業期間(最大)免除期間も保険料納付済み扱い(年金額減なし)事業主が「育児休業等取得者申出書」を提出
産前産後休業産前6週・産後8週同上(年金額減なし)同上
介護休業通算93日まで(3回分割可)同上(年金額減なし)事業主が申出書を提出
短時間労働者月額8.8万円未満・週20時間未満は非加入年金加入期間に算入されない適用除外の申請

特に注目すべきは育児休業中の保険料免除。休業中は本人負担・事業主負担ともに免除されるが、将来の年金額計算上は「保険料を満額納めた」のと同じ扱いになる。つまり、給与は減るが老後の年金は減らない。この制度を知らずに「育休を取ると年金が減る」と誤解している人が多いが、それは誤りだ。

よくある質問

厚生年金の等級が実態より高いと感じたらどうすればよいですか?
まずは直近の給与明細3ヶ月分を確認し、標準報酬月額が実際の報酬月額(残業代含む)と2等級以上乖離していないかをチェックします。乖離がある場合、事業主に「月額変更届」の提出を依頼してください。ただし、残業代のみの変動では随時改定の対象外のため、対応できないケースもあります。定時決定(9月改定)を待つか、昇給・降給などの固定的賃金変動を契機とした改定に期待することになります。
年金保険料を40年間満額払っても、将来の受給額は本当に保証されているのですか?
年金制度は「賦課方式」を基本としており、現役世代の保険料が高齢者の年金給付に充てられます。そのため、少子高齢化が進むと現役世代の負担が増えるか、給付が減額されるリスクがあります。マクロ経済スライドによる給付水準の調整が続いており、厚生労働省の試算では所得代替率(現役世代の平均手取りに対する年金額の比率)が将来的に50%を下回る可能性も指摘されています。個人型確定拠出年金(iDeCo)やNISAなど、自助努力による老後資金の確保が重要です。
70歳以降も働く場合、厚生年金保険料はかかりますか?
70歳到達後は厚生年金の被保険者資格を喪失するため、保険料はかかりません。ただし、健康保険の被保険者資格は75歳まで継続するため、健康保険料と介護保険料(40〜64歳は健康保険内、65歳以降は市町村に別途納付)の負担は続きます。70歳以降の給与収入は、年金と合わせて在職老齢年金制度による年金減額の対象になる可能性があるため注意が必要です。

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